平成16年度においては、おおむね以下のような調査研究および作業を行った。 1.研究代表者である真野は、本研究と並行して上越市史の編さんにたずさわってきたが、その調査および執筆の過程において、地域システムという考え方を中軸にすえた民俗誌の叙述方法について考察をめぐらせた。その結果、従来の研究における欠陥を次の2点に集約し、それらの点を克服すべく、『上越市史民俗編』の編さん方針を確立するとともに、同書において当該地方における地域システムのありかたをテーマとする執筆を行った。すなわち真野が提示した方針とは次の2点である。 (1)従来の民俗誌における調査は村落・集落を単位とした地域社会で完結することにより、その地域社会が社会内部で完結する仕組みに視点が限定されていた。真野はそれに加えて、家族レベルの経験からはじまって、村落・集落を包摂する行政・経済やマスメディア等が作り出すより大きな共同性にいたるまでを、連続した視点でもって叙述することが不可欠であることを指摘した。 (2)従来の民俗誌における叙述は、慣行という側面を重視することにより、制度として確立している民俗に焦点があつまり、生活実態から遊離する傾向がはなはだしかったといってよい。個人や社会における具体的な経験とシステムとの間の不断のフィードバックを見出すことが最も重要な視点である。 2.その他、数度にわたるインタビュー調査をおこなったが、その調査データおよび、真野がこれまでの調査活動において集積してきたインタビュー調査のテープ・リライティングをすすめた。これは膨大な量に及ぶので、3年目においても順次すすめる予定である。この作業と並行して、新潟県とりわけ上越地方在住の民俗研究者と、上越地方の民俗文化の実態や歴史、さらには特質等について、ディスカッションを行った。
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