1.本研究は従来別個の地域カテゴリーとして扱われてきた、町、農村(里)、漁村(海)、山村(山)を一連の複合的地域としてとらえ、そのなかで展開する日常生活の相互関係の様相とその歴史的変化を民俗学的観点から明らかにしようというするものである。本研究では、食糧の調達と販売のルート、肥料・燃料の入手方法、面識圏と労働力交換をめぐる人的交流、宗教・遊楽・医療等の諸活動、などに関して調査を行った。この間2005年には大規模な市町村合併が行われたことで新しい事態が発生した。そこで最終年度はそれら新上越市にまで調査範囲を拡大したこの新たな調査においては、従来の地理的歴史的に構築されてきた伝統的な地域システムに加えて、行政の関与に関しても積極的な関心を払うことにした。まだ合併後さほど時間が経過していないこともあって、合併の効果が民俗レベルにまで十分およんでいるとは言えないが、たとえば藁の焼却等に環境保全の観点から規制がかかるなどの影響が認められた。また広大な頸城平野の穀倉地帯では農業構造改善事業の先端地域として知られているが、そのために小規模農家のいわば切り捨てともいえる事態が進行していることも、新しい知見であった。この点は遠からず、この地域の民俗にかなり深刻な影響となって現れてくることと考えられる。 2.全体としては研究代表者である真野単独の研究であったが、最終年度にはあらたに調査協力員との連携による調査を進めた。そこで 北峰義巳氏(新潟県立安塚高等学校教諭) 武内朋広氏(新潟県上越市職員) 真野純子氏(国立歴史民俗博物館共同研究員) の3名に協力を依頼し、オーラルヒストリーに関する研究グループを新たに立ち上げた。このグループによる研究会活動はすでに3回を数えており、今後多くの収穫が期待される。
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