研究課題
本研究は、ウガンダ共和国に住む牧畜民ドドスの人びとが自らの生活する土地を描いた認知地図を基礎資料として、地理空間の認知とその表象化の過程をGIS(地理情報システム)等による情報処理の手法を援用して解析し、実践空間としての土地をめぐる「知」の構築機序を文化人類学的に解明することを目指すものである。研究計画の2年度にあたり、(1)現地調査により得られた土地をめぐる諸現象に関する言語資料や観察データ、文献資料等のデータベース化、(2)GIS処理を施した認知地図上にこれらを複合的に重ねあわせて解析し、(3)多次元的・重層的に経験される「土地」の現実態の描出を試みた。具体的な解析作業としては、GISによる認知地図の解析結果に、(1)土地・自然資源の利用の実態および実利実用的な知識、(2)牧畜活動および分散・移動をともなう生活様式の実態、(3)土地をめぐる隣接集団との関係、(4)集団儀礼、預言者の指示による個人的儀礼、家畜の腸を用いた占いなど儀礼的実践等の言語資料、行動学的資料、文化・社会的諸現象に関する資料等のデータベースを組みこみ、多次元のパラメータを用いた解析を加えた。以上の解析結果を通して、認知空間の成り立ちを物理空間、社会空間、表象空間という3側面から解析、考察をした。これらの作業および解析の経緯の一部は、The XXXII CAA Conference、日本アフリカ学会学術大会等において報告するとともに、アフリカの遊動民を扱った論文集(『遊動民(ノマッド)』)や「社会空間」を扱った論文集(『社会空間の人類学』)等に分担執筆した。また、年度の仕上げとして3月に協力者を募り、人文社会科学におけるGISの応用について総括的なセミナーを催した。なお、当初予定していた一次資料の補足収集のためのウガンダ共和国における現地調査は、調査対象地域の政情不安等により断念し、国内における資料収集を集中的に進めた。
すべて 2004 その他
すべて 雑誌論文 (5件)
遊動民(ノマッド)-アフリカの原野に生きる(田中二郎・佐藤俊・菅原和孝・太田至編)(昭和堂)
ページ: 542-566
エコソフィア 14号
ページ: 60-61
Proceeding of the XXXII CAA Conference, Prato, Italy, on 13-17 April 2004
社会空間の人類学(西井凉子・田邊繁治編)(世界思想社) (印刷中)
人類学は語る(赤堀雅幸・棚橋訓編)(北樹出版) (印刷中)