本研究は、1980年代と1990年代のヨーロッパ系アメリカ人高齢者世代の生きがい形成過程の変化を、申請者がこれまで研究してきた米国カリフォルニア州サンフランシスコ近郊と、ウィスコンシン州の小都市(研究上の仮称、リヴァーフロント市)とその周辺地域の地域を対象に、1990年代に起こった変動し続ける文化的・社会的変化の文脈の中で、明らかにすることを目的としている。 平成15年夏に、カリフォルニア州サンフランシスコ近郊と、ウィスコンシン州リヴァーフロント市を訪れ、両地域の高齢者センターを再訪し、1980年代の調査後のセンターの組織やプログラムの変化についてインタビューを行なった。また、1980年代の調査当時、これらの高齢者センターで、高齢者のケアに携わっていた人々を訪ね、現在の彼らの老後の生活と生きがいについて、前の世代と比較しながら、インタビューに答えてもらった。 予想したとおり、現世代の高齢者の間では、センター離れが目立ち、センターは、介護が必要な高齢者のデー・サービス機関としての役割が以前より重要性を増している。ボランティア活動に従事することは以前と同じように重要であるが、活動の中心は、以前のように、高齢者向けプログラムに限定されることはなく、退職後の過ごし方に選択肢の拡大と多様化が見られた。 地域社会全体を見ても、(1)情報技術の発達、(2)消費経済の拡大と、ショッピング・モールや全国的な大規模店舗の当該地域への進出、(3)女性の労働参加の拡大と、生涯キャリアを持った女性の高齢化、(4)アジア系新移民の受け入れの影響が顕著であった。 平成16年度は、引き続き、1990年代に起こった地域社会の変化と、高齢者世代の生活と生きがい形成過程の変化の関係を検討する。
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