本研究は、1980年代と1990年代のヨーロッパ系アメリカ人高齢者世代の生きがい形成過程の変化を、申請者がこれまで研究してきた米国カリフォルニア州サンフランシスコ近郊と、ウィスコンシン州の小都市とその周辺地域の地域を対象に、1990年代に起こった変動し続ける文化的・社会的変化の文脈の中で、明らかにすることを目的としている。 今年度は、平成15年夏の調査で明らかになった以下のことを、さらに深めて調査した。 1.高齢者センターの機能が、社交中心から、デー・サービスのような介護中心に変化。 2.高齢者の退職後の過ごし方に選択肢の拡大と多様化。 3.台湾、韓国、ベトナム、ラオスからのアジア系新移民の増加の影響。 平成16年夏には、アジア系では旧移民と考えられている日系人を比較の対象として加えて、申請者の調査地の人々と関係が深い、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコにおける日系人の高齢者センター、介護施設、低所得層の高齢者用アパートを訪問し、高齢者のケアに携わるスタッフを中心にインタビュー調査を行った。以下のことが明らかになった。 1.ヨーロッパ系アメリカ人コミュニティと同様、日系の高齢者向けのサービスは、1970-1980年代に構築された。その際、「日本語」、「日本食」、「日本人によるケア」といったエスニックな特色が強調され、日系人社会の支持を得たこと。 2.1990年代になると、台湾、韓国からのアジア系新移民が高齢化に伴い、日系の高齢者サービスや施設を利用するようになり、高齢者用アパートの住人の約3分の1を占めるようになったこと。 3.これらのサービスや施設を利用する日系人高齢者は、アメリカ生まれの2世、3世のよりも、第二次世界大戦後に渡米した「戦後移民」が顕著に見られること。 平成17年度は、引き続き、1990年代に起こった地域社会の変化と、高齢者世代の生活と生きがい形成過程の変化の関係を検討する。
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