研究課題
基盤研究(C)
本研究は、1980年代と1990年代のヨーロッパ系アメリカ人高齢者世代の生きがい形成過程の変化を、筆者がこれまで研究してきた、ウィスコンシン州の小都市(研究上の仮称、リヴァーフロント市)とその周辺の農村地域を対象に、1990年代に起こった変動し続ける文化的・社会的変化の文脈の中で、明らかにすることを目的とした。インタビューや参与観察を行い、以下の結果を得た。(1)1990年代に、アメリカの他の多くの中規模都市同様、大規模商業地帯が建設され、消費経済が拡大し、「家族農場」は、廃業するか、他の農場を買い占めて、大規模化・企業化するかの二者択一を迫られていた。1980年代後半から1990年代に、ラオス、カンボジアからのモンの人々を難民として受け入れ、多民族コミュニティに変化した。このような流れの中で、1980年代に見られたローカル色が薄れていき、他の都市と見分けがつきにくくなってきている。(2)高齢者福祉は、1970年代後半から現在に至るまで、主に3つの段階を経てきた。*第1段階(1970年代後半から1980年代前半まで):高齢者センターを中心とした、高齢者の社会的ニーズを満たす活動。*第2段階(1980年後半から1990年代前半まで):在宅における長期介護を支援するサービスに重点をシフト。*第3段階(1990年代後半〜現在)州の方針に対応するためのサービスの再編成。高齢者のみならず、障害者のためのリソースセンターとして、情報提供や、受給資格のアセスメントを担う。(3)高齢者の生きがいの源泉は、「人の役に立ちたい」、「人と関わる機会を持ちたい」、「教養を深め続けたい」という願いで、1980年代も現在も変化していない。しかし、そのための活動の場は高齢者センターに限られるわけではない。一見、高齢者のセンター離れが見受けられるが、高齢者サービスがメインストリーム化し、高齢者にとっては、選択肢が広がったといえる。
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