この研究は、戦前・戦後に活躍した日本人の民族学・人類学・民俗学・社会学の研究者が、GHQの下部組織であるCivil Information and Education Section(略してCIE、民間情報教育局)で占領下の日本で、基礎的な調査に従事しており、その具体的な調査を通じて、GHQの政策を遂行するため、いかに人類学を利用していたかを明らかにすることが研究目的である。 研究方法は、関係者からの聞き取りから得られた情報を、アメリカ・日本の公文書、回想録などの文献資料によって確認することで、その全体像を描くことである。アメリカ側のスタッフとして人類学者が派遣された日系二世のイシノ・イワオ氏に平成15年の聞き取りができた。その成果に基づき、今年度は平成16年7月にワシントンDCの公文書館で文献調査を行った。 本年度の成果は、昨年度、閲覧が不可能であった資料があり、情報公開法に基づいて開示請求をしてあったので、昨年のうちに閲覧許可書を入手して、本年度の調査に臨んだ。また昨年度は、GHQの民間情報教育局を中心に資料調査を行ったが、その部門以外にも、資源局などで日本の戦後改革が、どのように日本社会に影響をあたえたかを、当時のアメリカの社会調査の方法論を用いて調査しているので、他の部門についても文献調査をしたが、資料が膨大すぎて目的の資料は得られなかった。また本年度は、昨年度の調査から、戦後の日本研究が、戦時中の対日戦争分析に関連するThe Office of Strategic Services、およびOffice of War Informationの部署が関係あることが判明したので、本年度は、戦後に限らず、戦前の日本の情勢分析についても資料を閲覧した。特に、昨年度インタビューをしたイシノ・イワオ氏の勤務していたOffice of War Informationでは、『菊と刀』で有名なルーズ・ベネデイクトもともに仕事をしていたのであるが、彼女の同僚のレポートなど、戦後政策の立案過程で、日本社会をいかに把握するのかという議論が戦後のGHQの政策に継承されていることを確認できたことが大きな成果である。
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