本年度は、国内資料をつかった文献学的調査とカメルーン北部におけるフィールド調査をおこなった。国内資料としては、すでに収集されている北部カメルーンのマタカム族、ムヤン族、ズルゴ族、マダ族などの録音資料と出版物があげられる。録音資料は文字化できるものは、文字化をこころみた。文字にできないものは、現地のフィールドワークのさい、文字化をした。すでに、国内で文字化したものについても、再度インフォーマントとともに、内容把握と正確な記述を追求した。マンダラ山地の民族は、コイネー・フルフルデ語が上達したといっても、植物名、動物名などについては、なかなか適当なフルフルデ語の単語をさがすことができないのが、常であるので、動植物名の同定には、さらに研究をつづけなくてはならない。 今回の調査で感じたことは、マンダラ山地民のコイネー・フルフルデ語と都市居住の若年層のフルベ族のコイネー・ルフルフデ語が酷似していることと、公用語のフランス語の影響が無視できないということである。 昔話の内容からすると、やはり、山地民の語る物には、都市居住のフルベ族のあいだではきけないものがいまでも多数あるということがいえる。今回、継続調査をしてきたマタカム族のインフォーマントが、あらたな昔話を数十話かたってくれた。合計すると、一人で、三百話ほどかたったことになる。昔話が都市居住者のあいだでも、綿々とかたりつがれていることの証左となる。都市居住者の民族アイデンティティーは、なかなか外部のものには、わからないが、かれらのネットワークにのることができれば、これからの調査も容易になるとかんがえられる 今回つよく感じたのは、山地民の昔話のキーワードが、「肉」、「イヌ」、「変身」などであるということをつけくわえたい。
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