本年度は、カナダ、における医療事故紛争処理システムについてのインタビュー調査、ならびに国内で医療関係者に対する質問票調査を実施した。 1)海外でのインタビュー調査として、カナダオンタリオ州で採用された調停前置主義の医療事故紛争処理への影響、民間ADR機関でのメディエーションの試みやメディエーションスキルトレーニングの実情などにつきインタビューを行った。カナダでの試みが大きな成果とは言い難いとしても若干のポジティブな影響があることが理解できた。 2)国内での質問票調査については、医療事故紛争に関する意識及び紛争処理システムへの評価について、神奈川県看護協会、自治医科大学などの協力を得て、1000件を超えるデータを収集することができた。キャリアや職種、経験年数にかかわらず、裁判外紛争処理への評価や期待が高いこと、看護師にこうした紛争解決スキルへの親和性があることなどが、仮説として浮かび上がってきている。すでに入力作業も終了し、すべてのデータを通じた本格的な解析作業のだんかいにはいるところである。 3)2004年度も、以上の成果に関連する論稿をいくつか公表し、また学会発表なども行った。 次年度以降はこの国内質問票データの分析、海外で医療事故ADRが成功していると思われるイギリスとスウェーデンでの調査実施を行い、研究全体の成果をまとめる段階へと進めていく予定である。また、論稿のほか、耳鼻咽喉科学会、呼吸器外科学会など医学系学会での発表も予定している。
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