研究概要 |
「国家」をも含めて、従来「公共性」を独占しているとされてきた組織や機関の行う「公共性」が疑われ初めて久しい。大学もまたその例外ではない。従来、「大学の自治」の名のもとに自明の前提であった大学の「公共性」もまた疑義に曝され始めた。大学改革は,この「公共性」を再構築するものでなくてはならない。そのためには何が必要か。このことを本研究は,「大学の自治・学問の自由め再構成-大学憲章の研究-」というテーマから迫ろうとする。本研究は,アメリカの大学やオーストラリアにおける大学改革に学びながら,この「公共性」がいかに在るべきかを考察していくことになった。そこでは,大学の社会的責任,すなわち研究・教育・社会貢献のあり方,学生の権利,教職員の権利がキーワードとして確認された。 これらをどのように再構築していくのか。本研究は,大学当局の構成原理と役割という観点から,学長選考のあり方に関する研究を第1の柱とした。第2に,教職員組合のあり方を,教職員の権利の守り方そして教職員の公共性の担い方という観点から研究することにした。第3の柱を,学生の権利保障のあり方の研究に置いた。 本年度は,第1の柱と第3の柱を中心に研究を行った。すなわち,2005年に行われた岡山大学学長選挙において学内構成員の意向投票にもかかわらず,学長選考会議が意向投票第2位の候補者を学長としたことの意味を検討するために,岡山大学学長に,今回の学長選挙についてインタビューを試みた。第3の柱について,今年は,学生の権利をいかに法理論的に捉えるべきかその根幹にまで遡ることとし,いじめ問題を憲法学的に検討し,独自のいじめ概念の定義を提唱した。ここで確認された生徒の権利が,大学においても保障されるべきか,如何に保障されるべきかは今後の課題となった。
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