本研究は、地方自治体の議会が活性化を目指して取り組んでいる議会改革の構想および実践を調査・分析し、地方分権時代にふさわしい地方議会のあり方を研究しようとするものである。研究方法としては、先進的議会および全国議長会において議会改革の実践および構想に関する聞き取り調査を実施した。さらに、議会活性化の議論に関する比較法制度的研究として、ドイツの州議会における最近の議会改革を調査した。 まず、わが国の地方議会の活性化の取組みについて、議会運営上の実践としては、ユニークな発想と努力により積極的に取り組んでいる議会の中でも、とりわけ全国に先駆けて、また組織的、体系的かつ継続的に取り組んでいる三重県議会の実践例に集約され、またその構想および提言については、全国都道府県議会議長会が、当初より制度検討会を設置して組織的に取り組み、また関係諸機関に対して強力な要請を行っている。また、ニセコ町、四日市市議会、三重県議会および横須賀市議会において、議会基本条例あるいは会議条例を制定することにより議会自律権を確立しようとする取組みが注目される。 ドイツの州議会における議会改革の最近の例として、2000年のラインラント・プファルツ州の憲法改正を取り上げる。わが国の地方議会の活性化をめぐる議論における検討素材としては、同州の憲法改正に際して議論された論点のうち、住民参加の拡大方策としての住民発案制度が挙げられる。また、議会による執行機関の監視機能を実質化する手段として、議員の質問権および政府の誠実回答義務が憲法に採用されたが、その憲法上の権利性を明確にしたバイエルン州憲法裁判所の判決が注目される。
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