本年度は、公務員勤務評定システムの具体的な法制度のあり方を探るため、(1)わが国の行政法学・行政学・労働法学の文献購読、(2)フランス行政法学の文献購読、(3)わが国自治体における勤務評定関係の条例・規則等の収集、分析、論点抽出、(4)わが国自治体における実態の調査、(5)行政法学・行政学・労働法学の各研究者との意見交換を行った。 (1)について。本研究は、公務員法理論のみならず、行政法総論理論との関係を重視するものであるため、購入した書籍は行政法全般及びその関連領域にわたる。本研究との関連で、公務員の勤務形態多様化をめぐる法的問題や守秘義務に加え、情報公開、地方自治法関係の論文も発表している。 (2)について。公務員勤務評定制度に関する緻密な法システムにつき長い歴史を有するフランスの法制度を研究した。その結果、公務員勤務評定制度は、公務員の任用や身分保障、さらには、情報公開、個人情報保護、行政手続、行政訴訟といった論点にも密接な関係を有するものであることが確認された。なお、平成16年1月にはフランスに渡航し、最新の文献を収集した。 (3)について。既に勤務評定を実施している自治体について、運用のためのルールを比較検討するため、各自治体の勤務評定関係条例等につき、インターネットを利用し、186団体のものを収集した。とりわけ、勤務評定結果の本人開示に着目して分析したところ、開示を認める団体は32に止まり、認めないところが117団体、この点に関する定めが特にないものが37団体であった。 (4)勤務評定の実態につき、鹿児島県、鹿児島市、新潟県、新潟市、及び、公務労協において聞き取り調査を行った。 (5)について、東京大学、早稲田大学、労働法学会、公務労協の研究会等において、行政法・行政学・労働法専攻研究者と意見交換を行った。
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