研究概要 |
本年度は昨年度に収集した文献・資料を用いて憲法第八十九条の沿革の全容を捉えるという本研究の課題達成に向けた整理に全力を投入した。 ただし、平成17年になってから研究に伴う文献を補充し、2月に別用で渡米した際にも若干の資料の収集と民政局関係者1名(T.McNelly氏)への聴き取り調査を行った。 研究の進展とともに、同条の沿革について、従来ほとんど顧みられなかった次の5点が特に注目すべきものとして浮上してきた。 1.1873年の恐惶の前後における助成金禁止思潮の登場 2.1894年のニューヨーク州に於けるカトリック教育・慈善事業への助成を廻る論議 3.19世紀末に於ける公金支出統制に関わる"public purpose"法理の成立 4.1920年代の東海岸諸州における慈善事業への助成容認論の擡頭 5.1946年のSWNCC108/1,SWNCC108/2における私学助成促進原則の採用 目下、これらの点につき詳しく調べている。これら諸点を明らかにすることで、使途統制を条件とした私的事業への公金支出等の容認原則こそが総司令部案段階で第八十九条原案に採用されたものであるとする研究代表者のテーゼの裏付けが得られる見通しがついた。 なお、平成16年9月4日に大石眞教授主催の憲法研究会で同条の由来に関し研究の中間報告となる発表を行った。
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