本年度は、公共施設・福祉サービス・資金助成等にかかる事務・事業の「外部化」の実態について、「外部化」された具体的な事務・事業(施設の設置・管理、サービスの提供、助成の配分決定権限など)、「外部化」の形態(委託、市場化、PFIなど)、実施主体となる民間事業者の種類・性格(営利・非営利、法人の種別、住民参加型、専門性の有無など)、実施過程に関与している私的専門機関・専門資格者の種類・性質とその果たしている役割、これを保証する行政の関与のありよう(規制監督、助成、誘導)、「外部化」後の事務・事業実施 状況、住民のニーズ充足度について、社会福祉分野を中心に、いくつかの地方自治体の実態を調べた。ここで得られた結果を、民営化・市場化に関連する昨今の諸文献に著された知見と比較検討することをつうじて、系統立てて整理し、法的統制のあり方を考察した。その成果の一部は今年度出版した共著書に盛り込んだ。 来年度は、ドイツにおける同様の課題にも視野を広げつつ、財・サービスを利用する住民の権利利益の保障、地方自治体の供給責任という観点から、当該事務・事業の性格に照らして、これに関する政策・制度の中に私的専門機関・専門家がどのような形で組み入れられているか、あるいは「外部化」に伴い新たにどのような専門機関・専門資格が創出されたのか、これらにはどのような専門的な役割が要請されているのか、さらに、どのような点に制度上の限界が見出されるかに焦点を当てつつ、分析する。
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