本年度は、自治体の財・サービス提供事務・事業の「外部化」に関する日本とドイツとの比較研究に重点を置いた。ドイツにおいて伝統的に地方自治体が実施責任を担ってきた財・サービスの給付事務のうち、目下「外部化」をドラスティックに推し進める法制度改革が進行している公的扶助・社会福祉に焦点を当てることとした。9月に実施したドイツでのヒアリング調査を節目として、法制度改革の概要を理解する事前の準備、および事後の調査結果の整理分析、その後の改革の進展や改正法の施行の状況をフォローしつつ、まとめの作業をもっぱら行った。同時に、これを敷衍して、地方自治体の責任に関する理論を形成するうえで有益であると思われる、他の給付事務・事業にも普遍化可能な論点の抽出・検討等を行った。とりわけ、公的扶助も含めた財・サービスの給付決定権限、さらには不服申立の審理決定権限も、地方自治体の行政機関から、民間の有限会社形態の事業者に「委任」することを可能とする法制度改革が行われた点、および給付事務の「委託」を、伝統的な民間福祉事業団体から、市場原理を取り入れるべく営利企業も含む「入札」方式に切り替え、そこでの個々受給者に対する給付の効果を決定にフィードバックさせることとした点は、従来の行政組織法、行政手続法、および行政争訟法上の理論に看過できない影響をもたらすものである。来年度はこの調査結果を踏まえつつ、研究のまとめを行うこととしたい。
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