本年度は、本研究のテーマである「外部化」に関連する行政運営の実態および政策論議を視野に入れつつも、とくに地方自治体が広義の福祉サービスの提供を保証する責任のあり方に焦点を当てて、研究を行った。地方自治体は、「外部化」した事業が、監督、誘導、補助等の手法をつうじて、民間事業者によって公平かつ適正に実施されることを保証する責任を負う。とりわけ、住民の権利利益を保護するという観点から、これと給付提供事業者との間の法関係を調整する役割を果たすが、同時に、地方自治体は住民との法関係の変容に即した(事後手続を含む広義の)行政手続を整備しなければならず、そこでは自治体のかかる役割を踏まえる必要がある。たとえば、住民がある給付を受けるために申請を行うに際して、民間事業者が、当該給付の内容について事前に助言・説明を行うことで、自治体の広報・周知、および要援護者の発見という責務を肩代わりしている場合がある。また、給付決定自体は自治体が行うにせよ、受給要件の調査、給付の提供はいまや民間事業者が担っている場合がほとんどである。これは、社会福祉サービスのみならず生活保護行政でも進行している。つまり、被保護者の自立助長を図ることが生活保護法1条の目的であり、自治体はこれを実現するためケースワークその他の援助を行う任務を遂行するが、そのための人的リソースやノウハウをもはや有していない。そのため、ホームレスの自立支援等で実績を重ねてきたNPO等に任務の遂行を委託せざるを得ない状況となっている。そこで、このような状況にかんがみると、自治体は、行政手続において、住民に関係事業者から入手した情報を開示するとともに、当該給付について助言・調査を行った事業者、給付その他のサービスを提供した事業者等を、代理人、補佐人、参考人、あるいは利害関係のある参加人といった形で関与することを認めることが必要となるのである。
|