本研究の目的は、冷戦解消後に主流となっている内戦状況の紛争における、国際連合の活動(様々な平和維持活動や安全保障理事会決議に基づく多国籍軍の活動)とそこに展開する人道援助活動との関わりを分析し、人道援助活動が直面する諸問題を明らかにするとともに、可能な解決策を探ることである。初年度の研究は、国際連合の難民高等弁務官(UNHCR)や国際赤十字委員会(ICRC)を始めとする多くの非政府団体(NGO)による人道援助活動が直面してきた諸問題の分析を計画しており、この課題に専念した。 比較的良く知られている事例としては、ICRCがソマリアの治安崩壊の中で、赤十字運動の歴史の中で初めて人道援助要員と物資の安全確保のために現地の武装勢力を契約雇用したことや、UNHCがルワンダ虐殺の際の避難民の人道援助活動において、ゴマの難民キャンプにおける運営と治安の維持などに関して、様々な問題に直面し苦しんだ経験がある。以上のような事例を中心とする1990年代の活動を分析する広範な書物、論文等の資料を収集し、かなりの程度まで、読み込み、検討を行った。その結果、人道援助活動の中立性の問題に重点を置くのが適切であると考えるに至った。また、人道的保護の活動には多くの組織が関わるが、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国際赤十字委員会(ICRC)という2つの組織は、この領域における双壁である。本稿の主題である人道援助活動の中立性についても対照的な立場に立つものとして、これら2つの組織を取り上げて、検討することが示唆的であると考えられ、分析を進めた。
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