本研究の目的は、冷戦解消後に主流となっている内戦状況の紛争における、国際連合の活動(様々な平和維持活動や安全保障理事会決議に基づく多国籍軍の活動)とそこに展開する人道援助活動との関わりを分析し、人道援助活動が直面する諸問題を明らかにするとともに、可能な解決策を探ることである。 15年度の研究では、国際連合の難民高等弁務官(UNHCR)や赤十字国際委員会(ICRC)を始めとする多くの非政府団体(NGO)による人道援助活動が直面してきた諸問題の分析に専念した。具体的には、1990年代の活動を分析する広範な書物、論文等の資料を収集し、かなりの程度まで読み込み、検討を行った。その結果、人道援助活動の中立性の問題に重点を置くのが適切であると考えるに至った。また、人道的保護の活動には多くの組織が関わるが、UNHCRとICRCという2つの組織は、この領域における双璧であり、人道援助活動の中立性についても対照的な立場に立つものとして、これら2つの組織を取り上げて分析を進めた。以上の初年度の研究成果に基づいて、2年度の研究の方向性を確定した。 16年度では、15年度の研究を一層進めるとともに、研究成果を論文の形でまとめた。「国内避難民」に関する論文集の1章として出版される予定である。「人道援助活動の中立性と国際連合の軍事的活動-UNHCRとICRCのアプローチの比較の視点から-」と題する論文の構成を紹介すると、次のようである。「第1章 冷戦下における人道援助活動と軍隊」、「第2章 人道援助活動と軍隊の参加-事例分析」、「第3章 国連難民高等弁務官事務所の視点から見た人道援助活動への軍隊の参加に伴う諸問題」、「第4章 赤十字国際委員会の視点から見た人道援助活動への軍隊の参加に伴う諸問題」、「第5章 人道援助活動の中立性-国際連合難民高等弁務官事務所と赤十字国際委員会」。
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