2003年8月に新仲裁法が成立し、2004年3月1日から施行される運びとなったことから、本年度は、仲裁契約準拠法、仲裁可能性の準拠法、仲裁手続準拠法など、国際仲裁の規律をめぐる抵触法問題について、従来の議論を振り返るとともに、諸外国での規律方法を参照しながら、新仲裁法の解釈を検討する作業を行った。研究報告欄にあげたもののほか、2003年10月に日韓国際民訴法共同研究会にて「日本の新仲裁法について」、同9月に神戸大学CDAMSワークショップにて「国際私法的側面から見たLex Mercatoria-国際仲裁・国際私法・非国家法」というタイトルで報告を行った。また、いくつかの座談会に参加し(JCA50巻10号18頁、同11号2頁、判例タイムズ1135号140頁)、他分野の研究者や実務家と意見交換を行った。これらの作業の中で、仲裁合意の規律は、管轄の合意や準拠法選択の合意など、他の国際私法・国際民事訴訟法上の合意とパラレルに考えるべき点が多いことに気づかされたことから、目下、この三者を比較検討する作業を行っており、3月末に関西国際私法研究会、5月に国際私法学会において研究報告を行う予定である。また、2003年3月〜5月、米国においてAAA、CPRといったADR機関、及びいくつかのロースクールを訪問する機会を得て、民間ADR団体におけるADR振興への取り組みや大学におけるADR教育の一端を知ることができた。これについては、わが国における対応が極めて遅れているということもあって、なお幅広い調査研究を要するところであり、次年度以後、より力を入れて継続的に検討してゆきたいと考えている。
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