研究概要 |
昨年度から引き続き、国際仲裁の法規制を中心として研究を行った。まず、新仲裁法下での仲裁合意準拠法につき解釈論的検討を加え、2004年5月の国際私法学会シンポジウムで報告し、JCAジャーナル誌に論文を発表した。新仲裁法と国際私法の関係一般については、従来からの研究成果をふまえ、ジュリスト誌の座談会において手続法学者や実務家と意見交換を行った。また、新仲裁法下での国際仲裁の規整を諸外国に紹介すべく、"International Commercial Arbitration Under the New Arbitraton Law of Japan"と題する英語論文を執筆した。(The Japanese Annual of International Law, No.46に掲載予定)。 これら一連の研究の成果として、国際仲裁合意の法規制に関して、国際裁判管轄合意、準拠法合意との相関関係があることに思い至り、2003年6月の神戸大学「市場化社会の法動態学」研究センターシンポジウムにおいて、この3者を整合的に扱う必要性とその限界について提言した。また、国際仲裁でUNIDROIT国際商事法原則をはじめとする非国家法の適用が広く認められつつある原因について考察し、訴訟における非国家法の準拠法適格性を認めない日本の通説を批判した。 さらに、わが国における国際仲裁の利用活性化のために、法科大学院教育における仲裁・ADRの実践的教育プログラムの構築が急務であるとの認識から、2004年6月、神戸大学大学院において、仲裁に関する連続セミナーを実験的に行うとともに、同11月には、韓国・オーストラリアの仲裁専門家、日本の仲裁実務家を招いて国際ワークショップを開催した(詳細につき参照、http://www.cdams.kobe-u.ac.jp/archive/20041106.htm)。 また、知的財産権紛争におけるADRの利用可能性についても、基礎的な検討作業を開始し、2004年9月、韓国における日韓知的財産権法・国際私法共同セミナーにおいて、「知的財産権紛争とADRについて」というタイトルで研究報告を行った。 他方、国際調停の利用可能性については、未だ十分な研究準備が整わず、次年度に向けての課題とせざるをえない。
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