研究課題
今年度においても、昨年度と同様に、研究目的の一つとして掲げている、国連海洋法条件を軸としながら形成・展開している現代海洋法秩序の構造的な特色を析出する作業に取り組むことに集中した。具体的には、二つの柱を立てて、研究を遂行した。一つは、船舶航行制度に関する諸問題の検討であって、無害通航制度の多面的な検討ならびに武装強盗・海賊の規則課題の検討を中心に行った。このために、中国(上海水産大学と清華大学)に研究調査のための出張を行い、中国ならびにアジア諸国における実行を調査するとともに、中国の国際法研究者および政府関係者と意見交換を行った。これらの検討や調査を通じて明らかになりつつある点は、国連海洋法条約の関連規定の解釈が多様であって、国家実行も一様ではないということであるが、他方で、顕著な傾向として見て取ることのできる点は、条件をベースにしながらも、航行の権利に対する合理的な規制の試みがしだいに強まっているということであった。もう一つの柱は、海洋資源開発に関する諸問題の検討であって、大陸棚制度、深海底制度、漁業資源の保存と管理に関する制度に焦点を当てて、海洋秩序の到達点の解明に努めた。ただし、今年度にもっとも時間を割いたのは、大陸棚制度に関する問題の検討であって、具体的には、大陸棚の定義と外縁画定の課題について、大陸棚限界委員会の活動をみながら検討を深めた。大陸棚の定義は、実は極めて難解であること、大陸縁辺部の外縁が距岸200海里よりも沖合に拡がっている国の場合、大陸棚限界委員会に申請を行うことになっているが、この申請が近隣諸国との大陸棚境界画定の紛争に影響を及ぼす可能性のあることなどを明らかにしつつ、国連海洋法条約の運用における今後の課題を明確にした(田中則夫「科学的知見で外縁画定-国連・限界委の情報審査」月刊『エネルギーレビュー』二〇〇五年一月号所収参照)。昨年度と同様、今年度も十分にはなし得なかったのは、海洋法の思想史研究を深める作業である。最終の年度である次年度の課題としたい。
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平和秩序形成の課題(戦争と現代・第5巻)(渡辺治, 和田進編)(大月書店) (所収)
ページ: 271-316
月刊『エネルギーレビュー』2005年1月号 288号
ページ: 16-19
高等教育年報(二〇〇三年度)(国庫助成に関する全国私立大学教授会連合) 第7号
ページ: 10-20