本研究の目的は、近時急速に進展している巨大企業の再編・統合に適切に対処するため、独占禁止法の企業結合規制法理を再検討することにある。 平成16年(2004年)6月に公表した「独占禁止法による企業結合規制に関する一管見」(一橋法学3巻2号・51頁)は、平成15年度の研究の成果をとりまとめたもので、企業結合規制の根拠・趣旨について理論的側面から再検討を加え、ドイツ・ヨーロッパの理論状況を踏まえつつ、企業結合が製品市場での競争のテストを経ずに企業規模・事業範囲を拡大する点に、規制の契機があることを明らかにした。そこから、企業結合による効率性向上の要素は、企業規模および事業範囲の拡大以外による場合にのみ考慮されるべきことを示した。また、実体的規制基準については、市場支配的地位の形成又は強化とともに、その行使のシナリオの立証が要求される状況にあることを示した。 平成16年度の研究の成果は、平成17年(2005年)7月に公刊予定であり、公取委の新しい企業結合ガイドラインと、欧州委員会の新しい規則を対象とし、さらに、実際の企業結合規制の事例を踏まえて、企業結合の実体的規制基準に検討を加えることとしている。特に、近時有力に主張される企業結合規制における精緻な経済分析の利用が、法的規制としての企業結合規制においてどのような意義を有するのかを明らかにし、それが市場構造の変動についての予想の確実性を高める方向に作用するものの、それにより問題が解決されるものではないことを示す。 なお、これらの研究成果を踏まえて、企業結合規制における的確な規制手続のあり方の検討を含め、平成17年度以降も、逐次、本研究の成果を公表する予定である。
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