研究課題
基盤研究(C)
本研究は、企業組織の変動を<組織の範囲>と<組織の成員>の二つ側面からとらえ、それぞれの側面で生じている労働法学上の課題を検討することによって労働法の未来を展望しようとするものであった。第一の<組織の範囲>の側再では、戦略的組織再編の進展によって形式的な法人格を超えた企業の範囲が作りだされ、そのことが、同一法人格を組織の範囲とした伝統的労働法モデルを揺さぶっている。こうした企業組織の戦略的再編は、外形的には二つの方向をとっている。一つは、従来事業経営に一本化されていた経営の機能を事業経営機能と戦略投資的経営機能に分化させる資本を通じた企業再編の方向(企業分割や持株会社化)であり、もう一つは、従来の事業経営の一部を外注化し、それを業務請負企業に請け負わせる契約を通じた企業再編の方向(アウトソーシング)である。その結果、雇用責任主体は不明確になり、企業は解雇という手段をとるまでもなく、資本の引き上げや契約の解除という企業再編手法と通じて雇用責任を回避できることになってしまっている。労働法学の課題は、こうした中で、従来の(1)黙示の労働契約成立法理や(2)法人格否認の法理に代わる新たな雇用責任追及の法理を構築することである。第二の<組織の成員>の側面では、請負や委任などの労働契約によらない契約形式で企業と結びつく労働者が増大し、そのことが、労働契約関係にある正規労働者を企業組織の成員とした伝統的労働法システムを揺さぶっている。その結果、二つのことが問題となっている。一つは、企業組織を重層的・多面的に構成している労働契約以外の労務供給契約の労働法的な位置づけの問題であり、もう一つは、労働契約以外の契約に基づいて労務を供給する就業者の保護の問題である。労働法学の課題は、こうした中で、従来の「労働契約=従属労働」、「請負・委任=独立労働」という二分法を超える労働契約論を構築することである。
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季刊・企業と法創造 2巻2・3号
ページ: 25-30
法律時報 75巻5号
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Waseda Bulletin of Comparative Law 23
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季刊・労働法 206号
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Horitus-Jiho vol.75, no.5
Waseda Bulletin of Comparative Law vol.23
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