研究課題
基盤研究(C)
独占禁止法上、垂直的制限規制に最も関係に深い不公正な取引方法は、戦後、連合国最高司令官総司令部のが、1946年8月に日本側に示したいわゆるカイム案においては、第8節、第9節、第10節において、後に不公正な競争方法として結実することになる条文が示されていた。その後、1947年1月の日本側が作成した試案は「不当に自己の事業能力を拡張し又は競争者の事業活動を排除し若しくは支配する目的を以て競争手段として」各号に掲げられた方法を用しりることを不正な競争方法と定義した。この定義は後に削除されるが、不公正な競争方法のこのような性格付けは後にまで残ることとなった(主として私的独占の補完規定)。また、不公正な競争方法の違法性基準は、アメリカのFTC法5条の基準がシャーマン法2条の基準より低いものと理解されていたことにより、私的独占の違法性基準よりも低い基準(厳格な基準)であることが立法当時において意識されていた。垂直的制限の規制に直接関係する不公正な取引方法の日本における原点は、このようにして形成された。このような観点からすると、垂直的非価格制限の1類型である店舗別契約制の公正競争阻害性は以下のように考えられるべきである。流通取引慣行ガイドラインは、流通業者の取引先の制限のうち帳合取引の義務付けと仲間取引の禁止に関して、「当該商品の価格が維持されるおそれ」がある場合に、また安売り業者への販売禁止に関しては、それ自体として不公正な取引方法に該当するとしている。流通業者の取引先制限は、個々の販売業者の外部取引(別の販売業者に対する取引)を制限するものであるのに対し、店舗別契約制は、メーカーが小売業者に対し、特定の販売店舗における販売のみを許容し、小売業者が自己の別の店舗に商品を移動させた上、当該店舗において販売することを禁止するという小売業者の内部的商品移転を禁止するものであるから、制限の程度としては店舗別契約制の方が著しい。したがって、特に安売りの拡大をおそれて販売店舗を限定する店舗別契約制は、原則として不公正な取引方怯に該当するといえよう。
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民主主義法学・刑事法学の展望(下)(広渡清吾ほか編)
ページ: 508-532
日本経済法学会年報 26号
ページ: 65-86
(未公刊)
Viewing from Democratic and Criminal Jurisprudence.(Seigo Hirowatari et al. ed)
(unpublished)
The Annual of the Japanese Association of Economic Law 2005.(The Japan Association of Economic Law ed.)