現在の経済・金融社会において、頻発する金融・証券犯罪事象に対して、どのような制裁が有効であるかを、特に罰金刑等の財産刑を中心にすえて検討することを目的とする本研究3年度目の平成17年度は、以下のような作業を行った。 1.これまで検討の対象としてきた外国について、罰金刑の理論的・実際的検討を行った。その結果、罰金刑の理論的意義には、相違がみられるものの、実際には、その他の金銭的制裁との機能分担は、必ずしも厳然としたものではなく、金融・証券犯罪抑止のために金銭的制裁の諸形態が総体として捉えられていることがうかがわれた。 2.わが国でも、証券取引法において課徴金が導入されるに至った。そして、独占禁止法における課徴金制度が強化・改正される等の最近の立法、さらに、総合的な投資取引をカバーする投資サービス法の制定に向けた動きに鑑みると、現在の金融・証券犯罪の個別的類型の理論的検討があらためて必要となった。立法においても、課徴金が刑罰的な役割を担う方向にあることが明確になってきたが、このような方向性はどの程度の広がりをもつべきものかを視野に入れて、検討を加えた。 3.必ずしも刑罰を強化することだけが有効な方策ではなく、より機能的な違法行為抑止方法が存在するのではないかという本研究の当初の問題関心が、2に記したように、現実の動きとしても現れてきたと言えるが、立法状況にも鑑みより問題の重要性が増加してきている。最新の問題状況に十分に注意を払いつつ、さらに、制裁のあり方について研究をすすめる所存である。
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