1.国民の犯罪不安感に基づく厳罰化政策は、刑務所の過剰収容をもたらしたばかりでなく、更生保護分野においても対象者に対する監視機能の強化となって現れている。論者の中には、イギリスの社会内刑罰の運用を参考に保護観察の独立刑罰化を主張するものもある。特に、保護観察に電子監視を導入することも、現在の過剰収容対策として検討される状況が生まれている。更生保護においては、社会内刑罰化を追求するよりも、対象者のニーズを把握し、必要な社会的援助を提供することによって社会復帰を促すことが選択されるべき政策である。 2.その社会復帰を促す社会的資源として更生保護施設は重要な役割を果たしてきた。しかし、在所者がほとんど保護観察対象者となっている現状から、更生保護施設を生活援助施設から社会内処遇のための処遇施設へと転換する政策が進められている。そのため、更生保護事業法の成立を経て犯罪者予防更生法が改正され、また、保護局を中心にトータルプランが策定された。本研究では、更生保護施設の実態を調査することによって、このような方向が実務上いかなる問題を生み出しているか明らかにしようとした。その結果、更生保護事業法によって更生保護施設に対する国家的監督および指導が強化され、更生保護施設の「国家化」が進みつつあること、施設の民間篤志性と国家監督指導性の矛盾の中で職員の役割意識に混乱が生まれてきていること、在所者に対する指導監督が強化されてきていることなどが明らかになった。更生保護施設をすべてこのように処遇施設化することは、その篤志性による長所を失わせ、在所者には「社会内刑務所」として認識させることになろう。更生保護施設の利用を敬遠させることになれば、身寄りのない出所者の社会復帰を阻害し、全体としては再犯を助長するおそれがある。 3.性犯罪者の犯歴情報及び居住地情報の警察への通知制度が始まった。これにより、前歴情報が警察の捜査に利用されることになるだけでなく、保護観察の指導監督の側面が警察によって行われることも可能になった。しかし、このような犯罪予陽政策による監視機能の強化は、対象者の自立更生につながらないばかりか、社会からの排除を促し、また、対象者の社会への反発、再犯の促進となる可能性が強い。
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