研究課題
本年度は、2004年7月および2005年1月の二度にわたって、フランスの官民共同運営刑事施設(ヴィルノックス・ラ・グランド拘禁センターおよびヴァル・ドワーズ拘置所)を二箇所、民間委託型の犯罪少年収容施設(デニ・ル・チボー閉鎖的少年教育施設)を1箇所訪ね、官民双方の職員に対する面談を実施し、主として、こうした民間関与型矯正施設における官民の具体的な協力形態を、(1)施設建設、(2)設備、(3)職員組織、(4)職員と被収容者との関係、(5)刑務作業、(6)医療、(7)外部交通、(8)社会復帰プログラム、(9)施設生活、(10)規律秩序の各項目について調査を行った。また、フランス司法省および訪問施設参入民間企業から、その実績等に関する資料の提供を受け、限られた範囲ではあるが、これらの資料によって昨年度に検討を行った大学グループを中心とする調査を補充した。その結果、フランスの官民共同運営施設は、確かに厳罰政策によって惹起される過剰収容への対応策として捉えられる側面は否定できないが、むしろ、1990年代以降の被収容者に対する政府の一貫した社会化推進政策(端的に、移動の自由を制約する以外は、被収容者を「市民」として可能な限り扱おうとする政策)がその土台に存在していたこと、それ故、施設の民営化は、利益追求を目的とする民間企業の介入と、非営利的民間団体の施設および矯正政策への介入という二種類の外部世界との接触によって特長付けられているとの認識を得た。例えば、民間参入企業の活動評価という重要な局面においても、刑事施設に関わるNPO団体を始めとする地域社会の関与が、国の関与と並行して求められる事実、また、NPO団体が、犯罪少年施設のトータルな運営認可を国から得て、自らスタッフを雇用し施設運営を行っている等の事実への配慮は、官・民という古典的な対立関係ではなく、刑事施設への人的は民間資源の関与のあり方という多様な問題視角の必要性を痛感させるところとなった。本年度は、フランスでの実施例に対するこうした分析を行う一方、その知見を踏まえて、美祢社会復帰支援センターとして具体化された日本での民営施設構想について検討を行った。
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龍谷大学矯正・保護研究センター研究年報 第2号(未定)
矯正講座 第26号(予定)
ページ: 1-24
刑務所改革(菊田幸一, 海渡雄一編、日本評論社) (未定)
刑務所改革(菊田幸一, 海渡雄一編、日本評論者) (未定)
山梨学院ロー・ジャーナル 創刊号(未定)
犯罪社会学研究 第29号
ページ: 133-138