研究概要 |
債権の流動化が強く叫ばれている昨今、そのような要請と矛眉するかのような譲渡禁止特約について根本的な再検討を行い、同特約の機能と合理性、また機能にふさわしい効力論を探求する本研究は、本年度、次の3つの方向から検討を進め、以下の成果を得た。 第1は、日本における譲渡禁止特約の学説史・研究史について検討を行った。また466条2項の立法史についても考察を加えた。のみならず、従前、466条2項との関連がほとんど意識されていなかった468条2項にも着目し、次年度以降の研究の足がかりを得た。 第2は、譲渡禁止特約に関する比較法的考察を深めた。そのさいには譲渡禁止のみならず、468条2項に相当する抗弁接続条項についても検討した。 以上の考察の成果として、池田清治・[書評]ハイン・ケッツ著(潮見佳男・中田邦博・松岡久和訳)『ヨーロツパ契約法I』(法律文化社、1999年)(川角(他)編「ヨーロッパ私法の動向と課題』(日本評論社、2003年)57頁以下所収))を得た。本業績は以前公表したものの再掲だが、その作業を進めるなかで多くの新しい知見を得ることができた。 第3は、消費者法の検討である。消費者に対する債権の譲渡を許すべきかについては諸外国でも議論があり、消費者法は債権譲渡にとり各論的意味を持つ。そこで、その基礎固めをすべく、総論的考察を行った。Seiji Ikeda/Yasuhiro Okuda, Japanisches Verbraucher-schutzrecht und Einfluesse des europaeischen Recht : Das Gesetz ueber Verbrauchervertraege und der Gesetzentwurf ueber die Verbandsklage, Zeitschrift fuer Japanisches Recht 14,2003及び-筆者もメンバーを務めた-消費者組織に関する研究会『消費者団体を主体とする団体訴訟制度と消費者団体の役割』(内閣府国民生活局、2003年)はその成果である。
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