本研究は、債権の流動化が強く叫ばれている昨今、そのような要請と矛盾するかのような譲渡禁止特約について根本的な再検討を行い、同特約の機能と合理性、またその機能にふさわしい効力論を探ることを目的とする。そして、今年度は、既に実施計画で予告していたように、(1)日本における譲渡禁止特約の学説史・研究史につき、比較法的研究との接合を図る、(2)466条2項と重大な関連を有する468条2項について、比較法的検討など、さらに立ち入った研究を行う、(3)譲渡される債権の発生原因に着目した分析を行う、(4)物権と債権のシステム比較に取りかかる、という4つの目標を設定し、特に(3)につき、進展を見た。すなわち、前年度と同様、特に消費者取引に着目した検討を行い、消費者が債務者となっている債権においては、消費者の抗弁権等を確保するため、消費者との関係では譲渡の効果を認めず、他方、債権譲渡人に対する債権者との関係では、債権譲渡の効果を認める(つまり、債権は債権譲受人に帰属し、譲渡人の債権者は手出しできなくなる)、というのが、債務者を保護しつつ、同時に債権の流動性を確保するための方策として考えられるが、これは動産・債権譲渡特例法における、登記後、しかし、債務者に通知前の法的状況に、既にその先例があり、解釈論として可能ではないかとの知見を得たのである。さらに、これと併行して、消費者取引全般に対する関心が高まり、特に消費者団体訴訟については2つのシンポジウムで連続して報告を行った(北大・2006年2月5日、京大・同年3月4日)。このうち、前者については18年度中に成果が公表される予定である。
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