研究概要 |
研究初年度である本年は,まず実態調査として,国際的な企業ファイナンス,企業再編,企業結合をめぐって,従前の具体的なケースを調査を通じ,これまで十分に認識されてこなかった問題点を明らかにする作業を行った。特にダイムラー=クライスラーのような国際的企業再編の仕組みや,国際合弁の手法,国際的なファイナンスの手法等についての調査を行った.これらの収集された資料については,そのままの形では公表できないものが多いため,理論的な研究に反映させる形で間接的に公表されることになる. 第2に国際会社法の基礎理論に関する研究を行った.とりわけ,(1)いわゆる会社従属法(企業組織に関する規律に適用される)の決定基準,(2)会社従属法によって規律される事項の範囲,(3)準拠法選択というプロセスを経ることなく適用される公法(証券取引法等)とその域外適用の範囲の確定といった作業を行った.それらの暫定的な成果は,「国際会社法の諸問題(上)(下)」商事法務1673号17頁,1674号20頁(2003年)として公表された.これらの基本的な考え方を,さらに上記実態調査を行った諸領域(企業ファイナンス,企業再編,企業結合)と接合,応用していくことが今後の課題となる. なお本年度後半,若手の会社法・国際私法研究者・実務家との共同の国際会社法研究会を組織し,そこでの議論から多くの学問的な刺激を受けたことを付言する.
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