研究概要 |
国際会社法に関する以下のような研究活動を行った. 第1に,我が国における国際会社法の発展について,時代に沿った検証を行い,現在われわれがおかれている状況がいかなるものか確認した.抵触法上の問題と実質法上の問題が混淆した時期から,両者が明確に区分されるまで,また準拠法選択というルートを通らずに直接適用される絶対的強行法規が認識されるに至る経緯等を分析した. 次に,国際会社法の基礎理論として,(1)いわゆる会社従属法(企業組織に関する規律に適用される)の決定基準,(2)会社従属法によって規律される事項の範囲,(3)準拠法選択というプロセスを経ることなく適用される公法(証券取引法等)とその域外適用の範囲の確定といった作業を行った.特に,画一的適用の要請という観点から従属法の適用という形で一括的に処理がなされる範囲がどれだけあるかという角度から,従来の議論を見直した. 第3に,基礎理論の応用として,一般理論の適用との関連で,国際的な企業結合関係への法適用のあり方について検討した.とりわけ結合企業法制の中核的問題である,親会社の不利益指図から生じる責任(子会社株主・債権者の保護)と子会社の違法行為から生じる問題(親会社株主の保護)の問題について,責任のエンフォースメントの側面を含めて検討した. 第4に,新会社法の抱える国際会社法上の問題点について検討した.とりわけ,すべてを実質法レベルで解決しようとする手法の持つ限界について批判的に検討した. 最後に,以上の検討を踏まえた,日本の国際会社法の現状と課題について,英文の論稿による海外への紹介を行った.
|