本年度は、昨年度に実施した意識調査「日本の司法制度に関するアンケート」の集計を行った。調査は、平成12の司法制度改革審議会の「民事訴訟利用者調査」の調査対象と同じ全国10カ所において、選挙人名簿から任意抽出した4000人に対して行い、1273通の回答を得た(回収率31.8%)。調査項目は、法律問題の経験頻度、弁護士へのアクセス状況、訴訟利用意思、訴訟進行や訴訟関与者への評価、訴訟制度に対する評価などであった。主な集計結果を示すならば、訴訟問題の経験者は、全体の17.4%であり、うち弁護士に相談等したものは60.1%で、さらにこのうち、弁護士を見つけるのに苦労したのは、29.3%であった。審議会調査と類似の結果が見いだされるが、法律問題を抱えることのなかったものは、同様の質問に対し、68.8%が弁護士を見つけに苦労しそうであると答え顕著な差異を示している。また、訴訟回避傾向を尋ねた質問では、相続等身内の問題に関してはためらいを感じるものが82.1%に及ぶのに対し、同様の割合が、他人との契約問題に関しては52.4%、さらに交通事故の損害賠償に関しては30.5%と法律問題の内容如何によって大きく評価が異なることが示された。また、裁判に期待するものに関しては、審議会の調査とやや異なり、経済的利益の確保への期待がもっとも多く、91.5%の回答者が経済的利益を守ることを期待する旨を述べていた。引き続くのは、公正な解決へ期待(90.1%)権利の実現(85.1%)などであった。そのほか、訴訟手続に関する評価や訴訟関与者に関する評価に関しては、概ね審議会調査と同様の傾向が見られたが、裁判官に関しては59.4%が、弁護士に関しては66.2%が満足できるとしている。審議会調査と比べ、相対的に裁判官の評価が上がり、弁護士の評価にはほぼ差がなかった。訴訟制度に関する評価に関しては、満足ができるとした回答者は22.8%にとどまり、審議会調査同様、訴訟経験者以外の評価においても訴訟制度に対する評価が高くないことが示された。
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