今日の取引社会においては、大量の取引がおこなわれており、また、取引内容が複雑になっている。そのため、各人が自らの契約を締結することが困難であることも珍しくなくなり、各種の契約締結補助者が盛んに利用されるようになっている。本研究は、そのような契約締結補助者を利用した者が負うべき責任と、その者に認められる権利について検討した。また、この利用者の責任及び権利と密接に関係する、補助者の責任と権利、取引相手の権利義務についても、あわせて検討した。 これらの検討の主な内容とその成果は、次の通りである。 第1に、ドイツにおける類似の議論であるWissenszurechnungについて、比較法的検討をした。報告書掲載の第1論文「民法101条の規律-契約締結に第三者を用いた場合における意思表示の効力に影響を与える事情の判断」は、その成果である。 第2に、この比較法的検討を受けて、代理人、受任者、受寄者、遺言執行者、信託受託者について、とくにその事務執行の在り方について検討した。報告書掲載の第3論文「受託者及びこれに類似する者の自己執行義務について」は、その成果である。 第3に、契約締結を委ねた者が、その地位を悪用してゆだねられていない事柄をおこなった場合における補助者利用者の責任について検討した。報告書掲載の第2論文「民法478条による取引保護について」と、第4論文「民法94条2項及び民法110条の類推適用による不動産登記名義に対する正当な信頼の保護-最高裁平成18年2月23日第一小法廷判決(最高裁HP)-」は、その成果である。
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