研究概要 |
本研究では,法的サービスの受け手(顧客・依頼者)の保護という観点から,弁護士の倫理と情報公開のあり方を検討した。 具体的には,(1)わが国における弁護士倫理の規律のあり方,(2)弁護士倫理に関わる事例の処理に関する情報公開,を研究テーマとした。平成15年度は,上記(1)(2)について,わが国の現状と問題点を検討し,16年度は,外国,とりわけ法制度の面でわが国と共通点の多い韓国の現状を調査し,17年度は,調査・研究のまとめに努めた(一部は,田邊誠「法的サービスの受け手の保護と弁護士倫理」徳田和幸ほか編『現代民事司法の諸相』617〜624頁(2005年,成文堂)に公表)。 (1)については,わが国の弁護士懲戒制度には,以下のような問題があることがわかった(括弧内はそれに対する提言)。(1)懲戒事由が明確でないこと(具体的な事由の列挙などの方法で明確化すべき),(2)懲戒手続の運用に携わる弁護士の負担が過重であること(弁護士会内に専従の職員を置くなどの措置を講じるべき),(3)懲戒に関する一切の判断が弁護士会に委ねられていること(懲戒申立てについての弁護士会の判断に対する不服申立てを,法律専門家と一般の消費者などで構成する外部の組織が審査する体制を採用すべき)。 (2)については,弁護士会外の組織が,懲戒申立て事例及びその処理結果に関する情報の公開の適否・範囲・程度について判断する体制を設けるべきであると考えるに至った。 (3)については,十分な調査ができなかったが,韓国では,弁護士業務の質に対する依頼者の不満が一因となって,法科大学院の構想が生まれてきたこと。懲戒手続が弁護士の質の向上に貢献しているとはいえないことがわかった。また,弁護士倫理に関する情報公開については,わが国と同様に,必ずしも十分とは言えない。
|