研究概要 |
本研究の当初の目的はアメリカの強制執行制度を直接的にわが国の民事執行制度の改正に役立てることにあった。しかし,法改正のスピードは予想より速く,「改正競売法の実務的・理論的課題を展望する-都市再生・金融再生の視点から-」都市住宅学会第11回学術講演会学術講演会ワークショップ(於:平成15年11月30日,九州大学)にパネリストと参加して検討し,その結果を,久米義昭=河内孝夫=福井秀夫=萩澤達彦=吉田修平「改正競売法の実務邸・理論的課題を展望する--都市再生・金融再生の視点から--」都市住宅学44号80頁-91頁〔平成16年1月31日〕に公表した様に,研究分担者が立法課題として提案していた事項のかなりの部分が立法として採用された。その結果として,この研究の意義のかなりの部分が失われることとなってしまった。 そこで,今年度は,この研究の目的を,単に制度比較にとどまらない,より広範でより深いものへと変更することを余儀なくされた。すなわち,アメリカの強制執行制度を支えるシェリフ制度や法廷侮辱罪の研究に加えて,競売制度の法と経済学的分析,さらには,ドイツ法などの大陸法系との比較という観点も加味せざるを得なくなった。その結果,結果の公表が大幅に遅れることを余儀なくされた。 アメリカ合衆国の競売手続きは州法に委ねられている。それらの州を分類すると第1に,裁判所に対して競売手続きを申し立て,裁判所が競売手続きを主催する州がある。第2に,裁判所を介さずに譲渡抵当権者が私的競売を実行することが認められている州がある。さらに,第2の分類の州においても,裁判所の開始決定を要する州と要しない州に分かれる。また,競売の実施についても,シェリフ以外の民間業者におこなわせる州もある。今年度の本研究は,分類ごとの制度の紹介にとどまらず,わが国の競売制度の将来の発展に役立つ普遍的な成果をめざして,ファイナンス的な観点からの分析に力点を置いた。
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