近時のデザイン創作活動は、消費者のブランドを重視する購買決定や情報技術の発展、社会の高齢化などの社会の変化に対応して多様化してきているが、(1)我が国のデザイン保護法制は、意匠法の基本構造が特許法のそれと類似したものとなっており、保護を受けるためには出願し登録を受けることが必要となってきていることから、特に少量多品種の物品のデザインが創作される分野やライフサイクルが短い物品のデザインが創作される分野において利用しにくいものとなっていること、また、(2)意匠法の保護対象である意匠が「物品」と強く結びついたものとして規定されていること、さらに、(3)意匠権の保護範囲の判断基準が未だ明確ではなく、需要者に与える影響との関係があいまいであること等の問題がある。上記(1)の解決策として、著作権法による保護が認められる範囲を拡大することが考えられ、この点では我が国法と類似したドイツの法制が参考となる。ドイツ法との比較により、我が国法における意匠法と著作権法との関係理解が、実はドイツとは異なり、両者のいわば「棲み分け」という考え方に立脚していることが明らかとなった。著作権保護については、この「棲み分け」の観点から検討されることとなる。上記(2)に対しては、「物品」性の要件の緩和をすることになる。その際、著作権法によって保護されるコンテンツにまで意匠法による保護が及ばないようにしなければならず、この点の慎重な判断に基づく「物品」性の要件の内容決定がなされることとなる。上記(3)については、諸外国、とりわけEU法制が重要な示唆を与えるものであり、EU法制が採用した独自性要件、すなわち「情報に通じた使用者に与える全体的印象」の異同によって保護範囲を確定するように変更することによって、我が国法において意匠が市場において発揮する経済的機能に従った保護を受けることができるようになろう。
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