研究概要 |
1 平成15年度は,人体の医的利用に関わる実態を把握した上で,(1)人体利用にかかるインフォームド・コンセント(IC),(2)倫理委員会,(3)組織・細胞等の研究資源バンクや斡旋機関のあり方,(4)移植用臓器・組織の提供のあり方,について下記のような研究を行った。(5)組織・細胞等に対して認められるべき財産権・知的財産権については検討を開始しているものの見解の集約は来年度に持ち越した。 2 (1)ICに関しては,患者に遺伝子解析研究やバンクへの組織・病歴の提供が求められるとき,説明・説明文書は詳細になることが多いが,患者にとってその内容の理解は容易でないし,遺伝子治療臨床研究などと異なり,自分の治療に直結しない研究・バンク目的であれば,関心の薄い問題について理解が求められることになり倫理的問題をはらむ。また,研究の場合,細目は未確定のことが多く,バンクの場合は,その特質から研究内容の具体的特定はむつかしい。これは,確定された事項に対する同意というICの観念に反する。従来,研究は診療のように非計画的で長期間にわたらない点でICの観念になじむとされてきたが,それは新薬の治験等に当てはまっても,遺伝子解析研究やバンクなどには妥当しない。この問題について,研究やバンクの性格を踏まえた説明のあり方の試案を提言し,識者の批判を仰いだ。(2)倫理委員会については,委員に対する負担,委員の個人的意見による審査,委員に対する研修の必要性,モニタリング機能,議事録作成など事務局に対する負担,審査の質向上のためのオープンな検討と審査内容の守秘との牴触,などの問題が把握された。今後,これを踏まえて英米の動向に照らしたあり方の検討に移りたい。(3)バンクについては,匿名化および(1)のICに関わる問題の検討を進めた。今後,MTAに関わる検討に進みたい。(4)については,別掲の論稿を発表した。
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