1.遺伝学の発展がめざましい。医療への応用にも多くが期待されている。個人の遺伝子情報が日常的に扱われる現代では、「21世紀型の(遺伝子医療における)自律的決定」という新たな課題がある。遺伝子工学の発展により、クローンベビーのみならず、デザイナーチャイルド(遺伝子操作により誕生したヒトの子)すら可能になりつつある。そうした中、20034月と、2005年1月に順に、東京地裁判決、同事件高裁判決が出、重篤な遺伝性疾患については、医師に重い説明義務を課す方向が打ち出されつつある。和田は、それ以上に、新たな専門家による遺伝カウンセリングが必須と考える。本研究では、倫理的にも法的にも許容される範囲のデザイナーチャイルドがありえるかも検討した。仮に、ありえるとしても、親への専門的カウンセリングは必要であろう。新たな科学技術の発展に、法制度の整備が追いつかない現状こそが危急の問題である。 2.こうした事象の根底には、生命倫理問題が潜むことが多い。「一つの正しい答」が見いだせない中で、より長期的に、人類共通の倫理が方の基盤に見いだせるか、進化生物学・進化心理学の視点からも検討を行ったのが本研究である。まだ仮説段階ではあるが、ヒトの進化において、「進化上安定的な戦略(Evolutionary Stable Strategy ; ESS)」は確かに存在し、共有される倫理も、この枠内にとらえることが出来よう。
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