研究課題
基盤研究(C)
本研究は、帝国崩壊を体験した一九世紀初期ドイツから、一七世紀宗教内戦を終わらせたウェストファリア条約、そして聖俗両権の抗争から成立した一四世紀の金印勅書までさかのぼり、主権概念の起源と系譜を歴史的に解明した。1.従来ウェストファリア条約により宗派対立の時代は終息し、主権国家システムが成立したと考えられてきたが、これは神聖ローマ帝国には当てはまらず、二点において修正を要する。(1)フランス宗教内戦から成立したボダン主権概念は、一七世紀帝国で最初に受容されたとき、帝国と領邦の間で主権が分割された現状を正当化し、主権と異なる領邦高権を基礎付ける機能を果たした。山本文彦は、一六四八年以後も存続した帝国と領邦間の主権分割状況を、条約本文に確認した上で、この条約に規定されなかった「郵便権」の問題、つまり近代国家のインフラとして整備され始めた交通・通信手段の管轄権限をめぐる帝国と領邦の関係を、北ドイツ諸侯中心に解明した。(2)ウェストファリア条約で法的に解決された宗派対立の問題は、政治的には未解決なまま、七年戦争やドイツ啓蒙の言説を規定し、普墺対立の宗派政治的背景をなした。田口正樹は、多元的な帝国国制の中世的起源を、金印勅書に至る一四世紀帝国の政治過程に探り、聖界諸侯の指導的役割、そこから生じた教皇権の優位、他王国との関係を指摘して、帝国における聖俗関係の比重というその後の宗派問題の前提を明らかにした。2.一九世紀ドイツ史では、従来プロイセン中心の国民史観の下で、帝国解体とこれに続く改革期の意味は充分に問われなかったが、ライン同盟改革期の意義が近年指摘されている。つまり帝国の崩壊に伴い、主権概念が同盟規約で承認された一方で、(1)ライン同盟が主権国家の連合体という「国家連合」か、それとも帝国同様の「連邦国家」か、(2)旧帝国国制との断絶を図るか、それとも連続性を保つかが、ライン同盟公法学者の主権概念論争で争われた。権左武志は、ヘーゲルによる主権概念の第二の受容と定式化が、こうした帝国解体とライン同盟改革の経験から理解できることを解明し、ナポレオン法典受容を例として、主権概念が帝国に見られなかった近代化推進作用を有していた点を指摘した。
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「正しい戦争」という思想 (山内進編)(勁草書房)
ページ: 175-203
法学雑誌 52巻4号(印刷中)
The Idea of ‘Just War'(Susumu YAMAUCHI(ed.))(Keiso-Shobo, Tokyo)
Hogaku Zasshi(Journal of Law and Politics) of Osaka City University Vol.52, No.4 (forthcoming)
Hogaku Zasshi (Journal of Law and Politics) of Osaka City University Vol.52, No.4 (forthcoming)
北大法学論集 55巻5号
ページ: 171-190
創文 2005年7月
ページ: 19-22
北大法学論集 56巻2号
ページ: 1-49
史学雑誌 114編2号
ページ: 80-88
歴史の誕生とアイデンティティ (高田実, 鶴島博和編)(日本経済評論社)
ページ: 147-176
Hokkaido Law Review Vol.55, No.5
Sobun 2005.7
Hokkaido Law Review Vol.56 No.2
Birth of History and Identity(Minoru TAKADA, Kazuhiro TURUSHIMA(ed.))(Nihonkeizaihyoronsha, Tokyo)
Shigaku Zasshi Vol.114, No.2
北大法学論集 54巻・6号
ページ: 1-56
思想 2004年3号
ページ: 5-29
ページ: 30-61
創文 2004年4号
ページ: 1-6
ヘーゲル哲学研究 10号
ページ: 87-90
法制史研究 53号
ページ: 286-288
Hokkaido Law Review Vol.56, No.6
Shiso 2004.3
Sobun 2004.4
Study on Hegel's Philosophy Vol.10
Legal Hostory Review(Hoseishi Kenkyu) Vol.53
ヘーゲル哲学研究 9号
ページ: 110-125
歴史学と史料研究 (東京大学史料編纂所編)(山川出版社)
ページ: 21-48
Study on Hegel's Philosophy Vol.9
Historical Science and Study of Sources(Institution for Edition of Historical Sources(ed.))(Yamakawa-Shuppannsha, Tokyo)