研究課題
平成18年度は、本研究の最終年度にあたり、1920-30年代「洋行インテリ」によって構成された「情報共同体」の特質を、彼らの戦前・戦中・戦後の軌跡をデータベース化し整理することで、まとめあげ総括した。そのうち(1)ワイマール末期からナチス期にドイツに滞在した有澤広巳・国崎定洞・千田是也・勝本清一郎ら日本人知識人・文化人については、研究代表者が主宰するインターネット上のホームページ「ネチズンカレッジ」内に「1930年代在独日本人反帝グループ参加者・関係者一覧」の特別ページを設け、2006年9月15日現在の最新データを約100人分掲載して、社会的にも公開した。同時に、英文及び和文で論文・著書を執筆し、一部はすでに公刊された。(2)1920-30年代に旧ソ連に滞在した日本人については、すでに、戦後日本共産党指導者野坂参三と片山潜長女安子を除くほとんどが、いわゆるスターリン粛清により銃殺・強制収容所送り・国外追放になっていたことを研究代表者は明らかにしてきたが、本年度のロシア現地調査を含む本研究の成果にもとづき、2007年1月1日現在の最新データ約100人分を、「旧ソ連日本人粛清犠牲者・候補者一覧」として特設ウェブページに公開した。この作成過程は、2006年8月19日付『朝日新聞』でも報じられた。研究期間中の成果を総括する過程で見いだしたものは、当初、丸山真男が敗戦直後の日本人「インテリ」の特質として特徴づけた「悔恨共同体」との対比で、「情報共同体」と想定してフィールドワークと事例研究を重ねてきた「洋行インテリ」のつながりが、「共同体」というより「ネットワーク」と特徴づけた方が適切な、地理的広がりと多様性を持っていたことである。戦闘期の「情報共同体」は、「悔恨共同体」へと向かわず、「情報ネットワーク」により結ばれた、今日のグローバル社会を先取りする現代的性格を有していた。
すべて 2006
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労働運動研究 復刊14号
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社会理論研究 7号
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Christian W. Spang, Rolf-Harald Wippich eds., "Japanese-German Relations, 1895-1945 War, Diplomacy and Public Opinion", Routledge, London,
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『岩波講座 アジア・太平洋戦争』第8巻『20世紀の中のアジア・太平洋戦争』(岩波書店)
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岩波講座『「帝国」日本の学知』第4巻『メディアのなかの「帝国」』(岩波書店)
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情況 7巻3号
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