本研究課題の達成のため、アメリカ合衆国とドイツ連邦共和国とに、それぞれ3回にわたり現地に赴きながら、先進諸国政治の比較政治学的研究のための研究会議出席や、ヒアリング調査・資料収集等を行った。それらの作業に加え、日本での図書購入や資料収集、研究会開催などの作業も行った上での、本研究の成果の概要は以下の通りである。 第1に、比較政治理論研究に関して言えば、アメリカ出張の機会を利用し、この領域における最先端の理論状況についての知見を深め、またデューク大学のキッチェルト教授をはじめとする第一線の研究者との討論も行った。その成果はまず、民主化理論における最新の理論状況をとりまとめた上で、アジア諸国攻治の比較へのそれらの適用可能性を探った論文「比較政治学の新たな可能性-アジア諸国の政治をいかに比較するか-」として公表された。この分野ではさらに、「法整備支援の比較政治学的考察をめざして-E・オストロームの支援論を手がかりに-」と題する論文も公刊した。次に、本研究のテーマである「理論と実践との交錯」という観点から「実践的政治学の構築」をめざした論稿「法科大学院の政治学には何が必要か」も公刊した。また、2003年秋には韓国で行われた国際会議に招待され、「比較の中の日本政治と韓国」と題する報告を行った。また2004年秋にはウズベキスタンで開催された、民主化に関する国際会議にも招待され、そこで「民主主義の指標論」に関する英文報告を行った。この報告ペーパーは、報告後『名古屋大学法政論集』で公刊された。 第2に、先進諸国政治の現状分析に関しては、この間注目を集めたドイツにおける政権交代に焦点を当てた。1998年選挙で政権を奪取したドイツ社会民主党と緑の党は、経済状況の不調による失業率上昇もありながら、旧東ドイツ地域での洪水事件やイラク攻撃という偶発的な出来事に助けられ、今回の選挙でかろうじて政権を維持した。この経過について、「比較の中の現代ドイツ政治 序論-2002年9月に実施されたドイツ連邦議会選挙を手がかりとして-」と題する研究論文を公刊した。現在それに引き続く論文執筆を行っているところである。 なお、これらの作業の副次的成果として、この2年間に日本で開催された2回の国際研究会議でも、報告する機会を得た。
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