研究課題/領域番号 |
15530089
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阪野 智一 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (10162299)
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研究分担者 |
藤井 篤 香川大学, 法学部, 助教授 (90222257)
津田 由美子 姫路獨協大学, 法学部, 助教授 (30247184)
村上 信一郎 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10305675)
水島 治郎 甲南大学, 法学部, 助教授 (30309413)
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キーワード | 欧州統合 / ポピュリスト政党 / 極右政党 / 政治の人格化 / メディア・デモクラシー / ポピュリズム / ワークフェア改革 / 党員構造 |
研究概要 |
研究開始年度に当たる本年度は、テーマである欧州統合とポピュリスト政党の進出の問題に関連する多数の資料の収集に努めると共に、定期的に研究会を開催して知見を交換し、研究全体の見取り図を作成することを試みた。すなわち、各人が90年代後半以降の各国の事例を分担すると共に(阪野=英、村上=伊、古田=独、藤井=仏、津田=ベルギー、水島=蘭)、研究会では相互の事例を比較しつつ、ポピュリスト政党の近年の躍進の背景について多角的に検討した。その結果、暫定的ながらいくつかの重要な考察をえることができた。第一はポピュリスト政党と既存の政党配置の関係である。上記6カ国のうち、仏・伊・ベルギー・蘭の四国ではいずれも近年既成政党不信に裏打ちされ、排外主義的傾向を持つ新右翼政党が選挙で躍進したが、同様に政治不信や有権者の流動化が見られる英独の両大国では極右・新右翼政党は弱体であり、好対照を成している。この背景として、両国においてはいずれも野党である有力保守政党がイデオロギー的に保守化・権威主義的傾向をみせることで、結果として新右翼などに流れるべき不満層を吸収している可能性が指摘された。ポピュリスト政党の成否は、既存の政党の対立構造に大きく依存しているのである。第二はポピュリスト政党の性格付けの問題である。ナショナリズムを基盤とし、欧州統合に否定的なフランスなどの極右政党と異なり、近年伸張したポピュリスト政党は必ずしも欧州統合を批判しない(例えば蘭)。むしろこれらのポピュリスト政党は「ヨーロッパ文化の保持」を重視し、「自由と民主主義」の価値を前提とした上でイスラムを批判する、という論法を取る。自国中心主義的な(伝統的)ポピュリズムと並んで、欧州中心主義的なポピュリズムの成立が近年の新しい現象といえよう。研究の最終年度である来年度は検討をさらに深め、成果の公開に結び付けていきたい。
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