研究課題
基盤研究(C)
韓国の金融政策は、権威主義時代と1987年の民主化以降とで大きく変化した。権威主義時代には、金融政策は経済状態の変化に応じて転換されたが、民主化以降には、経済状態が悪いにもかかわらず政策の基本的な方針に変化はなかった。それはなぜか。本報告書は、大統領、国会議員、官僚などの政治アクターの行動に重点を置いてこの問いにアプローチする。大統領と、経済企画院、財務部、商工部といった経済官僚制との関係を本人-代理人関係としてとらえたうえで、官僚が大統領の意志決定を補助し、大統領が指示する範囲内で政策形成に関与した点で、民主化以前と以降に大きな変化はなかったと考える。他方、大統領は多くの意志決定において国会の承認を必要としており、彼が重要な政策を決定する際に相手にしなければならなかったのは、国会議員であった。それゆえ本報告書は、民主化を機に国会内における与党の支持基盤が「与村野都」から「地域主義」に様変わりしたことが、金融政策の転換と継続という帰結の違いを生み出した、と結論づける。政党構造の変化により、国会は民主化以前よりも世論の変化を反映しにくくなっていたのであった。例外的に忠実な特定地域の有権者を確保できた金大中政権だけが、政策転換が可能で、通貨危機からの脱出に成功したのであった。すなわち、金融政策の転換と継続は、世論の変化と政党構造の変化に対応してなされた、大統領の意思(政策選択)によるものだったのである。
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