1 徳富蘇峰のアメリカ旅行・・・明治30年(1897)における蘇峰のアメリカ体験を検証した。アメリカでの蘇峰は、ニューヨークでマンハッタンの摩天楼をはじめ壮大な物質文明に驚き、ニューヘイヴン、ボストン、ケンブリッジ、コンコードではその歴史と文化に感銘を受け、ニューイングランドへの愛着をさらに深めた。またケンブリッジではハーヴァード大学美術史教授チャールズ・E・ノートン、サンフランシスコではメソヂスト教会牧師メリマン・C・ハリスと出会い、それぞれの人格から強い印象を受け、アメリカに深い教養と宗教が存在することを実感した。蘇峰はこうした体験を通じて、かねてからのアメリカの印象を再強化するに至った。 2 徳富蘇峰欧米旅行関係文書の検討・・・蘇峰の遺族が提供して下さった徳富蘇峰欧米旅行関係文書の整理をあわせて行った。その中には、新たに発見された『徳富蘇峰洋行日記』、蘇峰の在米書簡などが含まれる。また杉井六郎氏が『徳富蘇峰の研究』(法政大学出版局、1977年)で使用した親族、国民新聞関係者宛などの書簡も再度検証した。この関係文書は、資料集として刊行することを検討中である。 3 明治30年代の徳富蘇峰・・・ロシアの東進南下政策に対抗して日英同盟を模索する一方、蘇峰がアメリカにどのような思いを寄せていたかを検討した。シオドア・ローズヴェルトの著作などを通じて、蘇峰は以前から抱いていたアメリカへの希望と共感をさらに強め、それが日露戦争期の蘇峰のアメリカ観につながっていくことになる。
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