研究概要 |
研究課題の「EUにおける食の安全確保政策と欧州食料安全庁の創設」を明らかにする観点から、平成15年度(初年度)は、まず、EUの食の安全確保政策の全体像を捉えることと、これとの関連で特徴あるEUの政策決定構造と機構改革の方向性を探ることに重点を置いた。なぜなら、食の安全確保政策も、欧州食料安全庁の創設も、ニース条約のもとでのEUの政策決定手続きの変更と機構改革の大きな流れとの中に位置づけていく必要があると考えられるからである。農産物についての規格、使用農薬や加工食品などに含まれる添加物の成分についての安全基準は国ごとに異なり、輸入国と輸出国との間で一部の帰省は、貿易障壁として争われることも珍しくない。EUにおける食の安全確保政策は、世界的な広がりを見せたBSE問題の教訓をもとに、食の史全性を確保するため、食肉をはじめとして、食品のトレーサビリティの確保を制度化し、リスク分析(リスク管理・リスク評価・リスクコミュニケーション)を中心にした独自の政策を構築し、また遺伝子組み換え食品などの安全性を確保し、消費者の健康を守るための「予防原則」を確立して、世界の食の安全確保政策のモデルとなっている。以上のような観点から、平成15年度の成果として、Koji Fukuda, et al.eds., European Governance After Nice, RoutledgeCurzon, 2003をロンドンで刊行した。また、拙著『国際行政学-国際公益と国際公共政策』(有斐閣、2003)を刊行し、その10章「食の安全性確保と国際行政協力」において、EUにおける食の安全確保政策、BSE危機と欧州の食の安全ガバナンスについて論じた。EUの政策決定構造と機構改革の方向性については、『EU政治経済統合の新展開』(2004年2月)を刊行し、考察した。
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