研究概要 |
本研究は、食の安全性確保のために、どのような国際的・国内的制度的枠組みや公共政策が必要であるのか、「EU食品安全政策と欧州食品安全庁」について考察したものである。2003年度は基本的な文献を収集整理しつつ、拙著『国際行政学』(有斐閣、2003)を刊行し、その10章において「食の安全確保と国際行政協力」を明らかにした。2004年10月には、早稲田大学で開催された国際シンポジュームにおいて、Accountability and Legitimacy, the Governance of Food Safety policy in the European Union and Japan"というテーマの英文ペイパーをまとめ、日本との比較でEUにおける食の安全問題について英語で報告した。EU・各加盟国は、国境を越える食品市場競争が激化するなかで、食品や飼料の生産者・流通業者・農畜産物加工業者等の収益や経営基盤を強化することを支援するような行政体制と食料政策を維持してきた。しかしBSE危機を契機として、消費者の健康や生命の安全を確保するため、「欧州食品安全庁」(European Food Agency : EFSA)を設置し、各加盟国の同様の食品安全関係機関と連携協力する行政体制を整備し、消費者重視の食品安全性確保へと大きな政策転換を果たした。これらEUと加盟国の両レベルでの制度的・政策的連携・協力により、欧州の食品行政システム全体を刷新し、消費者に対する食の安全性やアカウンタビリティを確保する先駆的な取り組みは、わが国においても重要懸案のひとつとなっている食の安全性確保を考える上で多くの示唆を与えるものである。これらの研究成果は、福田耕治「EU食品安全政策と欧州食品安全庁の創設」という論題の論考にまとめ、現在印刷中であるが、近く刊行される(寄本勝美・辻隆夫・縣公一郎編『行政の未来』成文堂、2005年5月、現在、第3稿ゲラ)。
|