戦後のジャーナリズム史研究においては、「なぜ軍国主義を阻止できなかったか」という問題意識から、左翼ジャーナリズムの活動とそれに対する当局の弾圧が中心的な研究対象となってきた。その結果、左翼メディアの復刻や研究は蓄積されたが、もうひとつの「反体制」メディアである右翼ジヤーナリズムの研究はほとんど行われず、資料の保存状況も秋からではなかった。本研究は、現代日本におけるバランスの取れた言論空間の発展の向けて、右翼ジャーナリズムの構造と機能に関する反省的・批判的な検討を行うために開始された。 初年度は、右翼の新聞雑誌の所蔵状況を確認し、右翼ジャーナリズム全体の見取り図を書くことに力を注いだ。一方で、蓑田胸期主宰の『原理日本』をメディアとして考察する個別研究を行い、その成果は竹内洋・佐藤卓己共編『蓑田胸喜著作集』第七巻の改題としてまとめ、2004年10月に柏書房より刊行する予定である。 また、右翼ジャーナリズムに影響力をもった陸軍新聞班一陸軍情報部やその周辺組織について研究を行ったが、その成果は『教育の国防国家-情報官・鈴木庫三伝』(中公新書)として2004年秋に刊行する予定である。
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