研究課題
平成16度は『原理日本』を中心とする日本主義右翼団体の機関紙に関する調査を中心に行った。『原理日本』を編集した蓑田胸喜の全集を竹内洋教授(京都大学大学院教育学研究科)と共同編集し、平成16年10月に柏書房より『蓑田胸喜全集』全7巻を刊行した。小職が担当した第7巻では、機関紙『原理日本』の全目次と蓑田執筆の編集後記を復刻し、解説を加えた。『原理日本』は、1925年11月7日に創刊された月刊雑誌で廃刊の第185号(1944年1月号)まで(未刊行の第63号1931年9月号をのぞき)184冊が現存している。離合集散が繰り返された右翼結社とその機関紙の中で、長期的に継続刊行された雑誌であり、その編集後記は他の右翼結社や機関紙との関係について豊かな情報を提供している。なお、『原理日本』をメディア論から分析した論文「歌学的ナショナリズムのメディア論-『原理日本』再考」を、国際日本文化研究センターの出版物(井波律子・井上章一編)に寄稿した。平成17年度は戦前期の右翼メディア全体に展望を与える『新聞と社会』(新聞と社会社)全10巻を柏書房より復刻した。『新聞と社会』1930年(昭和5年)12月に創刊された右翼新聞内報(月刊誌)であり、主筆の高杉京演は日本主義を掲げて各新聞社・通信社の内情や誤報・報道被害の糾弾、新聞業界の噂など、数多くの内部情報を掲載している。その内容の過激さゆえ当局からも睨まれ、『新聞と社会』は1940年9月号で廃刊に追い込まれている。この復刻作業を通じて得られた知見は、竹内洋・佐藤卓己編『日本主義的教養の時代-大学批判の古層』(柏書房・平成18年2月)所収の「日本主義ジャーナリズムの曳光弾-『新聞と社会』の軌跡にまとめた。
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岩波講座アジア・太平洋戦争 動員・抵抗・翼賛(テッサ・モーリス-スズキほか編)(岩波書店) 第3巻
ページ: 61-88
環(藤原書店) 1月号
ページ: 166-172
新聞と社会 第10巻
ページ: 325-353
表現における越境と混淆(井波律子, 井上章一編)(日文研叢書) 36
ページ: 183-204
マス・コミュニケーション研究 第67号
ページ: 84-104
思想(岩波書店) 12月号
ページ: 72-89