平成15・16年度に引き続き、ベトナム戦争関係図書およびケネディ研究関係図書の入手およびそれらの分析を中心的課題としながら、研究全体をめぐる構想の明確化を図り、来年度の研究完成に向けていっそうの前進を示した。 前年度、反乱鎮圧戦略の立案・展開・挫折という軍事的失敗の側面に焦点を当てて成果を上げたことを受けて、本年度は、外交・政治的側面の検証にとくに力を入れた。具体的には、ケネディ政権が「ドミノ(将棋倒し)理論」に象徴される冷戦論理にもとづき、南ベトナム防衛を至上命令として軍事的コミットメントの大幅拡大に踏み切ったこと、しかし同時に朝鮮戦争のようなアジアでの大規模地上戦争を強く嫌悪する世論の制約との狭間で最後まで揺れ動いていたことを一次史料から明らかにした。しかしその躊躇が必ずしも、従来しばしば見受けられる、ケネディ大統領が1965年までにベトナムから完全に撤退する決意を固めていたとする主張に根拠を与えてはいないことを指摘した。本研究はこうした二律背反的な様相について、アメリカのベトナム介入が抱える本質的な問題の顕在化であり、同時に、同盟国であるはずのアメリカ=ベトナム関係の齟齬、つまり改革による国民の支持獲得・戦争遂行の強化をともに求めるアメリカと、それに抵抗するベトナム側の対立の前提をなすものとして促えた。 なお本研究においては、同時に文科省科研費・基盤研究(A)(1)「アメリカの戦争と世界秩序形成に関する総合的研究」に研究分担者として参加した活動、とりわけ国外の研究者の知見に接したことが大きな刺激となった。
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