本年度は研究初年度であるため、民主化支援の現状と研究動向の把握に努めた。特に民主化支援の動向をみる上で最も重要な主体の1つである欧州連合(EU)に関する調査を実施するめどがついたため、フィレンツェの欧州大学研究所(EUI)への調査を実施した。 そこで得られた知見を要約すると以下のようになる。EUの民主化支援は、もとより加盟各国が行う二国間によるものが中心をなすが、国際組織としてのEU自体も無視し得ない重要な役割を演じている。人権に関する事項は、共通外交の一環として位置づけられており、EUの政策が加盟各国の政策となっている。民主化それ自体に関しても、次第にEU共通の政策文書が採択されるようになってきており、EU自体が政策決定の主要な主体としての役割を果たしている。具体的な民主化支援のプログラムについては、特に中・東欧向けのものが重要である。ポーランドとハンガリーの加盟候補国(当時)に対する民主化促進支援プログラム(PHARE)がその中でも中心的な役割を果たした。E加盟を実現させるための行政機構の整備を支援する技術協力プログラムは、民主化支援の一環としても重要な位置をしめている。アフリカなどヨーロッパ諸国による植民地化を経た諸国(ACP諸国)に対しては、コトヌー協定によって開発援助の枠組みが定められているが、その中で民主化が一つの優先事項として取り上げられており、選挙支援・議会支援などの具体的な支援プログラムが実施されてきている。残された研究課題としては、EU加盟国による民主化支援とEU自体による民主化支援の関係について分析を深めることがある。(了)
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